助けを求める人に差し伸べる手をもとう!
マイケル・コールマン神父の活動
法務省入国管理局管轄の東日本入国管理センター(茨城県牛久市)には,超過滞在者(オーバーステイ)や難民申請が認められない非正規滞在外国人が400名ほど収容されている.彼らの中には長年日本で働いていたにもかかわらず突然拘束された人もいれば,不法入国者ということで,飛行場で捕まった人もいる.日本に知人はいない,訪ねてくれる人も助けてくれる人もいない.そんな彼らの
SOS を受けて「牛久収容所」へ通い続けるのは,マイケル・コールマン神父.彼は,困っている人,助けを求めている人に手を差し伸べずにはいられない.
「わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは,わたしにしてくれたことなのである.」
マタイ 25,40.
マイケル神父が収容所への面会と生活用品の差し入れを始めたのは,10年以上前のこと.土浦教会主任司祭と土浦聖母幼稚園園長を兼務という多忙な現在も,毎週1回の牛久訪問は欠かさない.今は,土浦教会信徒の男性1名と女性3名が同行しているが,彼らはマイケル神父にとって心強い協力者だ.
「キリスト者は自分のそばに一人ぼっちの人,助けを必要としている人がいたら,彼らのところに愛をもたらすようしなければ.自分の心の中に燃えているイエスの愛を,それらの兄弟に分かち合わなければいけません」というマイケル神父は,国籍も宗教も問わず,分け隔てなく収容所の人々を支援し,面会室の中ではともに祈り,悩みを聞く.
日本に来る外国人たちは大きく三つのグループに分けられる.旅行者として来る人,仕事や勉強のために滞在する人,そして生きるために来た人.牛久に収容されているのは,ほとんどがこの三番目のグループの人たちだ.
最後のグループの中には日本で働いてお金を得て帰っていく人々,そして迫害などの理由で自国から逃げてきて帰るところのない人々がいる.強制送還されれば殺されるかもしれない人もいるという.
法務省入国管理局の資料によると,平成24年に難民認定申請を申し出た人は2,545人.また,難民認定が受けられず異議申し立てを行った人は1,738人.その中で難民認定された人はわずか18人(うち13人は異議申立手続における認定者),難民とは認定されなかったものの人道的な配慮が必要として在留を認められた人は112人である.
在留の資格をもたずに滞在している人々が日本の法律に反していることは,事実だ.マイケル神父の周りにも,法律違反なのだから強制送還されるのは当然と考える人もいて,彼の活動に批判的な人もいるそうだ.しかし,非正規滞在者と呼ばれる外国人の中には,20年近く日本で働いている人もいることを考えてほしいと,マイケル神父は言う.
「彼らは厳しい労働条件のもと,日本社会で懸命に生きてきました.時給は低く,保険もない.そんな中で頑張ってきた彼らの存在を,今まで日本の社会は認めていたんです.景気のよいときには彼らの労働力に頼ってさえいました.彼ら一人ひとりにはすでに日本での生活があり,人生があります.家庭があり,家族がいる.子どもたちには未来の夢もある.それなのに不景気になったから,社会が変わったからと突然追い出されても,彼らに帰るところはありません.彼らが直面している状況を,理解していただきたいと思います.」
「わたしについて来たい者は,自分を捨て,日々,自分の十字架を背負って,わたしに従いなさい.」
ルカ 9,23.
日本人は黙って見ていることは得意.見ることは見る,でも自分から手を差し伸べようとする人は少ないのではないかと言うマイケル神父は,神の福音に従う心があれば,法律の中で生きることと苦しむ人に手を差し伸べることは両立できるはずだと考えている.
「日本の教会では外に向かって強く語るより,中でお祈りをして穏やかに微笑むほうが敬慶な信者だと思われる.だけどイエスは,すべての造られたものに福音を宣べ伝えなさい(マルコ 16,15)と言われます.信仰は伝えるためのもの.自分がいただいた恵みを分かち合おうという熱意が必要です.宣教の過程では無理解や批判を受けることもあるでしょう.でも,それを恐れていてはいけない.
「キリストはこの世にいる間に,行いと言葉によって,私たちに愛の精神を教えられた.困っている人を助け,悩んでいる人を慰め,病人を癒してくださいました.私たちもキリストの模範に習い,より深く,より広く,人々を愛する心を養わなければいけない.」
多くの日本のキリスト者は,自分はキリスト者だと言いながら日本の常識とか日本の感覚の中に生きている.あるところは日本人,あるところはキリスト者という住み分けをしているのではないか... 優しい笑顔で語るマイケル神父.でもその言葉は,深く重い.
「わたしがあなたがたを愛したように,あなたがたも互いに愛し合いなさい.」
ヨハネ 13,34.
土浦教会の二階には差し入れ物資が保管された「牛久の部屋」がある.各国語の聖書,洗濯洗剤,歯ブラシ,歯磨き粉,シャンプー,石鹸,下着,靴... とりわけテレホンカードは彼らの生命線だ.牛久収容所での外部との通信手段はカード専用の電話のみ.しかし一枚千二百円のカードを買うお金は,彼らにはない.マイケル神父はテレホンカードをできるだけ安く入手できるところを探し,差し入れている.
「私がいなくなったらこの活動が続かなくなると困るから,今,同じ気持ちの人を探しています.日本は大奮発の国.大きなニュースに対しては敏感ですが,長くは続かない.二週間くらいはみんな注目して,いち早く寄付が集まったりするけれどすぐ忘れる.イエスはどうだつたでしょうか.今日,明日,明後日,次の日,その次の日... 毎日,あきらめずに少しずつ語り続けたイエスは,すごく頑張り屋です.」
だから,たくさんの共感者が現れて,一緒に歩いてくれるようになるまで頑張るというマイケル神父は,今年の10月で80歳.若いときより忙しい,と笑う.
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